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未解決の文字

もひとつブログです

『極短小説』読みました

ツイッターでもいろいろ書いたけど、この本、すっごいおもしろかった。

 

極短小説 (新潮文庫)

極短小説 (新潮文庫)

 

 

アメリカで、55語(英語で)以内のショートストーリーを公募した作品集。

書き方にはルールが決められてるの。

 

●55語の小説の公式ルール

 〈55語の小説〉はかならず「愛と死」をテーマにしなければならない。そのほかにいくつかのルールがある。
 ①背景 すべての物語はどこかで起こらなくてはならない。心の中でも宇宙でもいい。
 ②単数または複数のキャラクター キャラクターは人間でも動物でも岩でもいい。
 ③葛藤 物語の流れの中でなにかが起こらなくてはいけない。
 ④結末 かならずだれかが何かを発見しなくてはならない。発見するのはキャラクターでなく読者でもいい。
 ⑤詩や随筆は対象外。ジョークもお呼びでない。
 応募作品は、入選したばあいを考えて住所氏名電話番号を添えたうえで、Fifty-Five Fiction, Dept.55, 505 Higuera st., San Lui Obisupo, CA93401 まで。

 

 ///引用元:a049

(※本から引用するより、↑こちらのサイトで短くまとめられていたので、そこから引用しました) 

それで、この本は日本語に訳する時にも、訳者の人が字数制限を自分に課して、「日本語では200字以内」って決めて訳したんだって。

 

最近、私は即興小説にはまってるけど、これは字数制限もあるけど、それ以上に書き手が意識する「制限」は、「時間」と「テーマ」。

このふたつにはガチガチに縛られるから、その縛られた中で物語を生み出さなくちゃいけない。

 

「縛られる創作」の即興小説をおもしろがってる人には、このいくつかのルールと55語以内の縛りがある『極短小説』はすごいうってつけの作品集だと思った。

同じルールで極短小説も書いてみたくなる。

 

これ、訳文と一緒に原文も読んでみたくなる。

英語があまりわからなくても、55語だと、訳文と照らし合わせて「英語だとこー書かれてるのかー」って読んでいけると思うからねー。

 

さっきのサイトでは、いくつか原文も一緒に載せてくれてて、原書がほしくなるよねー。

 

ショートストーリーはたくさんの数が載ってるから、お気に入りの選び方も読んだ人それぞれだと思う。

 

私のお気に入りはこれ。

 

- 絶体絶命 -(ダン・アンドルーズ)

 悪魔には表情がないといわれる。そのとおりだ。男の顔にはなんの表情も浮かんでなかった。またもや新しい苦痛をわたしに加えているというのに、その顔にはなんの同情も浮かばない。わたしの瞳に浮かんだおびえや、わたしの顔に浮かんだ恐怖の色が、この相手には見えないのだろうか?

 男は冷静に、いや、それどころか、職業的な手つきで、血みどろの仕事をつづけたすえ、調子よくこういった。「うがいをしてください」

 

- ジョージとマーサ -(スタンフォード・スミス)

 疲れきったセールスマンの週一回の帰宅。

「お帰りなさい、ジョージ」とマーサが迎えた。

 夕食と暖炉の前のくつろぎ。あとはベッドと眠り。

 階下で猫が花瓶をひっくりかえした。

 寝ぼけまなこのマーサがさけんだ。「あら、たいへん! うちの主人だわ!」

 寝室の窓が大きな男を立ててひらかれるのを聞いて、やっとマーサはぱっちり目がさめた。

 ベッドの中はからっぽだ。

「ジョージ! どうして屋根の上なんかへ登ってるのよ?」

 

- 遺言 -(ロブ・オースティン)

 自殺者の遺書は簡潔だった。

 わたしの友、わたしの恋人、わたしの妻へ。

 どうか自分を責めないでくれ。

 

 だれも自分を責めなかった。

 

ひとつだけ、一回読んだだけではぜんぜん意味がわかんなかった話があった。

これね。

 

- ボナペティ -(キャサリン・ポールマン)

 七時十五分。

「ご予約なさってない? 申し訳ございません。大きなテーブルがあくまでお待ち願えれば……」

 七時四十五分。

「申し訳ございません。まだお席のご用意ができませんので……」

 八時二十五分。

「ドナーさま御一行の八名さまで? お席のご用意ができました。おや、五名さましかいらっしゃらない? 今夜はデザートだけ? それにつまようじを? はい、かしこまりました。では、どうぞこちらへ……」

 

レストランで予約しないお客が来て、席待ちしてる話ね。

「大きなテーブル」っていうから、ふたりとかじゃなくて、何人かいる、のはわかったけど。

でも、オチの意味がぜんぜんわかんなくて、それでタイトルの「ボナペティ」っていう意味をしらべた。

「bon appétit」っていうフランス語で、「召し上がれ」っていう意味らしーけど、直訳すると「良い食欲を」ってことらしくて。

 

それでもまだピンとこなくて、私はしばらく、すごい意味考えつづけちゃった。

「この”ドナーさま”が最初から待ってた人たち?」

(この時点で「ドナー」の意味がわかってませんでした)

「8名が5名に減ったとこに、なんか意味があるのー?」

って。

 

それでやっと、オチの意味がわかった!

なるほど、それで「デザート」と「つまようじ」なんだー、って。

 

それからこの文庫をぜんぶ読み終わったいちばん最後に、いくつかの作品の解説が載ってて、そこに「ボナペティ」もあった。

そこには「ドナー」の意味が書かれてて、それで私が理解したオチが正解だったー、って答えあわせができたのです(^_^)

 

 

 

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ぜんぜん余談だけど。

この前、ラジオで三谷幸喜さんが、

「申し訳ございません」

っていう言い方が間違いだっていう話をしてた。

 

「申し訳」「ない」

じゃなくて、

「申し訳ない」

っていうひとつの言葉なんだから、「ない」っていう部分だけ「ございません」っていう丁寧語にするのはおかしーんだって。

 

正しくは、

「申し訳ないことでございます」

なんだって。

 

三谷さんもそれ知らなくて、自分で「とんでもございません」っていう言葉を書いて、それを読者(?)から注意されて知ったんだってー。

「とんでもない」もこれでひとつの言葉だから、

「とんでも」「ない(ございません)」

じゃなくて、

「とんでないことでございます」

が正しいんだって。

 

でもうちの職場の公式接客マニュアルにも、

「申し訳ありません」

って言葉が書かれてるー。