未解決の文字

もひとつブログです

「福島ドライヴ」を読んで

小学館ビッグコミック

 

2013年11月10日号に載ってる読み切りマンガ、

 

「福島ドライヴ // 萩尾望都」(ためし読み

 

を、読んだ。

 

スプリさんから勧められて。

ほかのマンガに興味なかったから、最初は立ち読みで終わらせちゃおー、って思ってたけど、そんな読み流しちゃえないマンガだった。

 

絵がすごい綺麗だったから、それで買ってきた。

帰ってからまた読んだ。

なんども。

 

なんども、なんども、ページをめくっちゃう。

セリフなんてないマンガ。

ずっと歌の歌詞が書かれてるだけ。

 

この歌、甲斐よしひろの「立川ドライヴ」って歌なんだって。

別に震災の歌ってわけじゃなくて。

 

私、甲斐よしひろって人、知らなくて、だからこの歌も聞いたことない。

 

萩尾望都ってマンガ家も、知ってる、っていうだけで。

 

でも、こんなマンガがあるんだね。

セリフなんてないのに、歌詞だって別に震災のことじゃないのに。

 

言葉と絵。

人生の1シーンだけ切り取られた絵。

流れる時間の一瞬のコマ。

 

なんども読んで、涙がぽろぽろ出てきて、自分もいろんなこと、おもいだして。

 

私がおもいだしたのは、震災のことじゃない。

 

ケータイ。

それと、死。

 

とってもらえない電話をかけて、読んでもらえないメールを送って、ケータイ鳴って、それでみつけた現実。

 

そんな記憶が重なっちゃって。

 

自分が生きてるのに、その時、ちがう場所で大切な人が死んでる。

 

そのわかれ目って、生と死にわけられた瞬間じゃない。

もっと前に、わかれ目はあった。

 

あの時。

もうちがう道になってたよね。

 

首都高みたいに。

一緒にあがって、ずっとあっちに行こうって一緒に思ってたのに、途中の分岐点で、ひとりはこっち、ひとりはそっち。

そこでわかれて、でも行きつくところはおなじだから、ってこっちはドライヴ楽しんで。

でもわかれたそっちの道は、ちがった。

こっちが行きついたところに、そっちからは来ない。

 

その途中で消えて、もう二度と会えない。

 

そんな記憶が、このマンガと重なって、セリフのない絵が、言葉より深い哀しみを心に描く。

 

こういう才能ってすごいなー、って思った。

自分の心にある形のない想いを、なにかに表現できる才能。

 

うらやましーなー。

こんな才能があったらなー。

 

自分の中にあるだけで、自分でだってそれに輪郭つけれなくて。

そーいうものを、外にだして、形にして、それで「自分の想い」と向き合いたい。

 

 

 

まだ発売中の雑誌なので、気になったら読んでみて。

震災をこんなふーに描く表現に、私は泣けた。

 

震災のあと、愛とか絆とか、すっごいハートフルなキーワードが日本中に溢れて、私はとても気持ち悪かったんだけど。

突然の正義にかられた言葉とか歌とか。

そーいうのに、私の心は重ならなかった。

 

「福島ドライヴ」を読んで、おしつけられない感動にひたる。

その感動は、目をとじて涙がでてくるよーな静かな哀しみ、だけど。

 

すごいね。

ほんとに才能って。

 

人の心をこんなふーに震わせる。

共鳴の表現。