『極短小説』読みました
ツイッターでもいろいろ書いたけど、この本、すっごいおもしろかった。
- 作者: スティーブモス,ジョン・M ダニエル,John M. Daniel,Steve Moss,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/03
- メディア: 文庫
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アメリカで、55語(英語で)以内のショートストーリーを公募した作品集。
書き方にはルールが決められてるの。
●55語の小説の公式ルール
〈55語の小説〉はかならず「愛と死」をテーマにしなければならない。そのほかにいくつかのルールがある。
①背景 すべての物語はどこかで起こらなくてはならない。心の中でも宇宙でもいい。
②単数または複数のキャラクター キャラクターは人間でも動物でも岩でもいい。
③葛藤 物語の流れの中でなにかが起こらなくてはいけない。
④結末 かならずだれかが何かを発見しなくてはならない。発見するのはキャラクターでなく読者でもいい。
⑤詩や随筆は対象外。ジョークもお呼びでない。
応募作品は、入選したばあいを考えて住所氏名電話番号を添えたうえで、Fifty-Five Fiction, Dept.55, 505 Higuera st., San Lui Obisupo, CA93401 まで。
///引用元:a049
(※本から引用するより、↑こちらのサイトで短くまとめられていたので、そこから引用しました)
それで、この本は日本語に訳する時にも、訳者の人が字数制限を自分に課して、「日本語では200字以内」って決めて訳したんだって。
最近、私は即興小説にはまってるけど、これは字数制限もあるけど、それ以上に書き手が意識する「制限」は、「時間」と「テーマ」。
このふたつにはガチガチに縛られるから、その縛られた中で物語を生み出さなくちゃいけない。
「縛られる創作」の即興小説をおもしろがってる人には、このいくつかのルールと55語以内の縛りがある『極短小説』はすごいうってつけの作品集だと思った。
同じルールで極短小説も書いてみたくなる。
これ、訳文と一緒に原文も読んでみたくなる。
英語があまりわからなくても、55語だと、訳文と照らし合わせて「英語だとこー書かれてるのかー」って読んでいけると思うからねー。
さっきのサイトでは、いくつか原文も一緒に載せてくれてて、原書がほしくなるよねー。
ショートストーリーはたくさんの数が載ってるから、お気に入りの選び方も読んだ人それぞれだと思う。
私のお気に入りはこれ。
- 絶体絶命 -(ダン・アンドルーズ)
悪魔には表情がないといわれる。そのとおりだ。男の顔にはなんの表情も浮かんでなかった。またもや新しい苦痛をわたしに加えているというのに、その顔にはなんの同情も浮かばない。わたしの瞳に浮かんだおびえや、わたしの顔に浮かんだ恐怖の色が、この相手には見えないのだろうか?
男は冷静に、いや、それどころか、職業的な手つきで、血みどろの仕事をつづけたすえ、調子よくこういった。「うがいをしてください」
- ジョージとマーサ -(スタンフォード・スミス)
疲れきったセールスマンの週一回の帰宅。
「お帰りなさい、ジョージ」とマーサが迎えた。
夕食と暖炉の前のくつろぎ。あとはベッドと眠り。
階下で猫が花瓶をひっくりかえした。
寝ぼけまなこのマーサがさけんだ。「あら、たいへん! うちの主人だわ!」
寝室の窓が大きな男を立ててひらかれるのを聞いて、やっとマーサはぱっちり目がさめた。
ベッドの中はからっぽだ。
「ジョージ! どうして屋根の上なんかへ登ってるのよ?」
- 遺言 -(ロブ・オースティン)
自殺者の遺書は簡潔だった。
わたしの友、わたしの恋人、わたしの妻へ。
どうか自分を責めないでくれ。
だれも自分を責めなかった。
ひとつだけ、一回読んだだけではぜんぜん意味がわかんなかった話があった。
これね。
- ボナペティ -(キャサリン・ポールマン)
七時十五分。
「ご予約なさってない? 申し訳ございません。大きなテーブルがあくまでお待ち願えれば……」
七時四十五分。
「申し訳ございません。まだお席のご用意ができませんので……」
八時二十五分。
「ドナーさま御一行の八名さまで? お席のご用意ができました。おや、五名さましかいらっしゃらない? 今夜はデザートだけ? それにつまようじを? はい、かしこまりました。では、どうぞこちらへ……」
レストランで予約しないお客が来て、席待ちしてる話ね。
「大きなテーブル」っていうから、ふたりとかじゃなくて、何人かいる、のはわかったけど。
でも、オチの意味がぜんぜんわかんなくて、それでタイトルの「ボナペティ」っていう意味をしらべた。
「bon appétit」っていうフランス語で、「召し上がれ」っていう意味らしーけど、直訳すると「良い食欲を」ってことらしくて。
それでもまだピンとこなくて、私はしばらく、すごい意味考えつづけちゃった。
「この”ドナーさま”が最初から待ってた人たち?」
(この時点で「ドナー」の意味がわかってませんでした)
「8名が5名に減ったとこに、なんか意味があるのー?」
って。
それでやっと、オチの意味がわかった!
なるほど、それで「デザート」と「つまようじ」なんだー、って。
それからこの文庫をぜんぶ読み終わったいちばん最後に、いくつかの作品の解説が載ってて、そこに「ボナペティ」もあった。
そこには「ドナー」の意味が書かれてて、それで私が理解したオチが正解だったー、って答えあわせができたのです(^_^)
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ぜんぜん余談だけど。
この前、ラジオで三谷幸喜さんが、
「申し訳ございません」
っていう言い方が間違いだっていう話をしてた。
「申し訳」「ない」
じゃなくて、
「申し訳ない」
っていうひとつの言葉なんだから、「ない」っていう部分だけ「ございません」っていう丁寧語にするのはおかしーんだって。
正しくは、
「申し訳ないことでございます」
なんだって。
三谷さんもそれ知らなくて、自分で「とんでもございません」っていう言葉を書いて、それを読者(?)から注意されて知ったんだってー。
「とんでもない」もこれでひとつの言葉だから、
「とんでも」「ない(ございません)」
じゃなくて、
「とんでないことでございます」
が正しいんだって。
でもうちの職場の公式接客マニュアルにも、
「申し訳ありません」
って言葉が書かれてるー。